修理作業報告書
 
「北向観音堂 聖観世音菩薩立像」
 
平成19年5月24日〜平成19年7月15日

 
NPO古仏修復工房
пEFax 0296-55-0388
 

 
1.名称:   木造 聖観世音菩薩立像
2.員数:   1躯
3.制作年代: 江戸時代
4.構造:   木造、一木造り
5.修理前像高/総高:  67.5cm/ 77.0cm(光背無し)
  修理後像高/総高:  67.0cm/ 88.0cm
6.所在地:  −
7.所有者:  −
8.施工者/施工場所:NPO古仏修復工房 代表者 飯泉太子宗
          〒300-4408 茨城県桜川市真壁町真壁351-1
 
9.修理作業報告
目次
@修理前写真/修理完成写真
A聖観音菩薩 修理図解 
B修理前調査/修理前現状
C魂抜き/清掃作業
D両腕の接着/鼠害の補修
E光背の補修/台座の補修
F本体・光背新補箇所/台座新補箇所
G古色作業前/古色作業後
H参考 天衣/面部赤外線写真
I修理銘札
 
10.所感
今回、修理に入った像は小野小町ゆかりの仏像で、伝説的にも非常に興味深い仏像でした。像自体は江戸時の仏像ですが、修理の課程で、盗難にあった元々の本尊の部材が見つかりました。それらから察するに、本尊は中世を遡る古像であったことが想像されます。
今回修理された聖観音菩薩はその本尊の御前立ちであった可能性が高いかもしれません。細かなところを見ていきますと、顔をかなり力を入れて彫刻している点や、
膝をかがませている点、盗難にあった本尊と大きさが全く同じと思われる点などは、想像ですが、この聖観音を作った仏師が、本尊を参考に作った可能性もあるように感じました。
今回の修理では、これらの元々の本尊の部材と思われるものも、使わせていただきました。聖観音菩薩と併せて、後世に100年、200年と永く伝えていっていただければ、元々の本尊の供養にもなると思います。
また、今回の修理に当たっては、鈴木氏、鴻巣氏、両名のお世話になりました。この場を借りてお礼申しあげます。



修理作業報告
@修理前写真/修理完成写真
 
修理前写真             

[損傷状況]
本体…化仏の亡失。 両手の遊離。指の欠失。 右天衣の遊離。左天衣の 亡失。足ほぞ不適。
光背…部材の遊離。光背部材の一部と柄の 亡失。
台座…台座の背面部のずれ。床との接地面 の不適。各、蓮弁の亡失。  
持物…持物の 亡失
※ 右天衣と後背に関しては、別の仏像の 部材と後に判明した。

修理完成写真

[作業方針]
作業方針としては、当初部分の保存を最優先した上で、足らない部分の復元を目指した。 新補箇所は古色仕上げとした。 また、像の立ちが不安定だったため調整を施した。



修理作業報告
A聖観音菩薩 修理図解



修理作業報告
B修理前調査/修理前現状
 
修理前調査             

[修理前調査]
2007年4月4日の調査によって、聖観音菩薩像の部材と思われる、両手、後背、天衣などが見つかった。

修理前現状

[修理前現状]
お堂が修理された事もあり、像の周辺環境は良好。



修理作業報告
C魂抜き/清掃作業
 
魂抜き             

[魂抜き]
2007年5月24日、 観音寺の住職により、北向観音堂にて、魂抜きが行われた。

清掃作業

[清掃作業]
像全体に付着しているホコリや汚れを刷毛や筆にてきれいに払った。



修理作業報告
D両腕の接着/鼠害の補修
 
両腕の接着             

[両腕の接着]
はずれていた腕を、ほぞを作った上、漆にて接着した。

鼠害の補修

[鼠害の補修]
ネズミにかじられていた箇所を木糞漆にて整形し た。



修理作業報告
E光背の補修/台座の補修
 
光背の補修             

[光背の補修]
はずれていた各部材を漆と合成樹脂にて接着の上、漆箔を施した。
柄は新たに新造した。

台座の補修

[台座の補修]
像を立てたときに不安定なため、框を新造し、揺れ止めの材をかませた。
像の足ほぞが大きすぎるため、当たる部分をほりこみ、さらに小材をかませた。
光背の背面部の位置を調整した。
当初の蓮弁が1枚しか現存しないため、残り、14枚を新造した。



修理作業報告
F本体・光背新補箇所/台座新補箇所
 
本体・光背新補箇所             

[本体・光背新補箇所]
新たに新補した箇所
本体… 化仏、両手指、左天衣
光背…光背一部、柄
持物…未開蓮

台座新補箇所

[台座新補箇所]
台座…框、蓮弁14枚



修理作業報告
G古色作業前/古色作業後
 
古色作業前             

[古色作業前]
顔料、泥絵の具などを使用し、新しく作った材に色をおいていく

古色作業後

[古色作業後]
古色完了。
古い材の色に新しい箇所を合わせる。



修理作業報告
H参考 天衣/面部赤外線写真
 
天衣             

[天衣]
その形から、中世を遡る古仏の天衣と思われる。
おそらく、盗難にあった旧本尊のものか。
今回の修理に流用する。

面部赤外線写真

[面部赤外線写真]
面部の赤外線写真。
眉、 瞳、目の縁取り、ひげが 鮮明に墨書きしてあるのがわかる。
尚、他に墨書は見つからなかった。



修理作業報告
I修理銘札
 
修理銘札             

[修理銘札・表]
新造した框の裏に釘で打ち付けた。

修理銘札・裏

[修理銘札・裏]
面部の赤外線写真。
眉、 瞳、目の縁取り、ひげが 鮮明に墨書きしてあるのがわかる。
尚、他に墨書は見つからなかった。



〒300-4408 茨城県桜川市真壁町真壁351-1
NPO古仏修復工房