特定非営利活動法人 古仏修復工房

古仏修復工房は文化財の修復を通して日本の文化を守り、後世に伝える活動をしています。


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1.2011年 集落管理 十一面観音立像 江戸時代 

作風はごく素朴なもので、地方の仏師の作だと思われます。
写真からは小さくて見えませんが、頭頂の化仏(頭に付いている小さな顔)は上半身まで彫り出しながら、左手先は別材にせず、一材から彫り出しにするなど、クセの強い造形感覚だなと感じます。また、台座は別の像の台座を転用している可能性が高く、現代に伝わるまでに受難の時代があったかもしれないことが想像できます。今後、集会所で守り伝えられることになると思いますが、長く次の世代に残っていって欲しいと思います。




神馬像修理作業報告書


修理完了写真





修理前写真





【事業概要】
1.名称  :木造 十一面観音立像
2.員数  :1躯
3.管理者 :−
4 所在地 :茨城県−

【法量】(※修理完了後)
十一面観音立像
像本体 像高  40.9cm 最大幅 11.5cm 最大奥 10.3cm
髪際高 36.7cm
光背 光背高 56.4cm 最大幅 23.8cm 最大奥 10.4cm
ホゾ高     2.8cm
台座 台座高 21.2cm 最大幅 23.0cm 最大奥 19.7cm
全体 総高 77.5cm 最大幅 23.8cm 最大奥  19.7cm


【品質構造】
 木造(針葉樹)、一木造り、彫眼、漆仕上げ、肉身部は漆箔か。頭頂化仏の首より下部分から、頭部、左手先も含む主要体幹部を彫り出す。頭頂化仏の頭部、及びその他の化仏の頭部は別材。右手先は別材。両足先は別材。


【修理基本方針】
 歴史的な価値を損なわない文化財修理を基本とし、後世に像を伝えていくために必要な処置を施す。


【損傷状況】
ア)亡失箇所がある。(頭頂化仏、右手先、持物(水瓶、蓮華)、飾り金具類。)
イ)曲がって取り付けられている。(両足先)
ウ)全体に斜めに傾いでおり、直立していない。
エ)面部の漆が劣化している。
オ)衣部分の赤い漆部分が部分的に剥落している。

・光背
ア)亡失箇所がある。(光背の先端部、上部左側部分、八葉部分)
イ)割損箇所がある。(周辺部右下部分)
ウ)後補の漆が塗り重ねてある。


・台座
ア)台座、各段の順番がずれている。
イ)形状が不適と思われる後補箇所がある。(蓮弁…複数枚、蓮肉背面部、敷茄子、反花先端部の飾り…複数箇所)
ウ)間違いと思われる接合部材がある。
エ)亡失部材がある。(小飾り…複数箇所。)
オ)構造的に脆弱である。
カ)後補の漆が塗り重ねてある。


【修理仕様】
・十一面観音立像
ア)亡失箇所は新たに造る。(頭頂化仏、右手先、持物(水瓶、蓮華)、飾り金具類。)
イ)両足先は取り付け直す。
ウ)直立するように調整する。
エ)劣化している漆部分は取り除き、肉身部に関しては新たに漆箔を施す。
オ)漆の剥落箇所は、剥落止めの処置をする。

・光背
ア)亡失箇所は新たに造る。(光背の先端部、上部左側部分、八葉部分)
イ)割損箇所は再接合する。(周辺部右下部分)
ウ)後補の漆は可能な範囲で除去する。


・台座
ア)台座、各段は適切な位置に調整する。
イ)形状が不適と思われる補修部材は新たに作り直す。(蓮弁…複数枚、蓮肉背面部、敷茄子、反花先端部の飾り…複数箇所)
ウ)間違いと思われる接合部材は外し、適切な位置で接合する。
エ)亡失部材は新たに造る。(小飾り…複数箇所。)
オ)台座については補強を施す。
カ)後補の漆は可能な範囲で除去する。

※以上、古色仕上げとする。


【所感】
台座は元々、別の像の台座であったものを十一面観音に転用したものと思われる。蓮肉部の天板部分に四角彫り込みがあることから、坐像の可能性が高い。また、天板部分の左右に小さな穴があることから、錫杖や矛のような持物を執っていたと思われる。元は千手観音の台座を転用したものであろうか。
 



2011年 修理補助にかかる会計報告


・寄付総額    446000円
・使用金額     
雑費+消耗品    4420円
修理補助材料費  240000円

・前年度繰越金  874451円
・次期繰越金   1076031円 



 

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