特定非営利活動法人 古仏修復工房

古仏修復工房は文化財の修復を通して日本の文化を守り、後世に伝える活動をしています。


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1.2012年 集落管理 阿弥陀如来坐像 

今回、修理した像は、震災で破損した像です。大きな揺れで台座が破損し、本体も台座から落ちたため、大きな被害を受けました。修理では、構造的にも補強を加えたので、今後、多少の揺れがあっても問題ないと思われます。現在、仏像は集落管理の小さなお堂に安置してありますが、大きさから考えても元はどこかのお寺の本尊であったはずです。江戸時代、在地の仏師の修理銘もありましたが、古老に聞いても来歴はよく分からず、幾つかの場所を転々としてきた像のようです。ともあれ、長く次の世代に残っていって欲しいと思います。




阿弥陀如来坐像 修理作業報告書

修理完了写真





修理前写真





【事業概要】
1.名称  :木造 阿弥陀如来坐像
2.員数  :1躯
3.管理者 :−
4 所在地 :茨城県−

【法量】(※修理完了後)
阿弥陀如来坐像
像本体
像高 57.7cm/最大幅 48.5cm/最大奥 45.3cm/髪際高 50.2cm
光背
光背高 93.2cm/最大幅 67.2cm/最大奥 19.7cm/ホゾ高 5.0cm
台座
台座高 44.7cm/ 最大幅 76.0cm/ 最大奥 66.0cm/全高 45.0cm
全体
総高 138.2cm/最大幅 76.0cm/最大奥 66.0cm



【品質構造】
木造、寄木造り、玉眼、肉身部漆箔、衣部分は漆仕上げか。主要体幹部は前後二材を接合する。割首を施す。右肩材と左肩側面材を体幹部に接合する。右前腕部、右手先は別材。左袖口、左手先は別材。膝前材は一材を体幹部にホゾで接合する。裳裾先は別材。


【修理基本方針】
現状維持修理を基本とし、欠失部分は可能な範囲で復元を試みる。


【損傷状況】
・本体
ア)部材が外れている。(膝前材、左袖口、左手先、裳先、ホゾ材)
イ)部材接合部がゆるんでいる。(体幹部部材、左側面材、右肘)
ウ)部材亡失。(右、第三指、第四指 左、第三指、第五指、右腰小材、左腰小材)
エ)後補漆層が剥がれてきている。
オ)玉眼に金箔が付着しており、玉眼を隠している。
カ)虫穴、鼠害がある。

・光背
ア)全体に部材の接合部分がゆるんでいる。
イ)部材亡失。(光背先端部複数箇所、頭光部分、宝珠)
ウ)後補の補強材が外れかかっている。
エ)鼠害のため、大きく損傷している箇所がある。(八葉部分に2箇所)
オ)一部、漆箔の剥落がある。

・台座
ア)各部材の接合が外れ、ほぼ全壊状態。
イ)欠失部分がある。(敷茄子の装飾部分。框の飾り部分、複数箇所。蓮弁複数 箇所、背面の隅足、内部構造材)
ウ)一部、部材が割れている。(蓮弁、複数枚)
エ)鼠害のため、大きく損傷している箇所がある。(天板に2箇所)
オ)一部、漆層の剥落がある。


【修理仕様】
・本体
ア)外れている部材は再接合する。(膝前材、左袖口、左手先、裳先、ホゾ材)
イ)接合がゆるんでいる部材は再接合する。(体幹部部材、左側面材、右肘)
ウ)亡失箇所は新造する。(右、第三指、第四指 左、第三指、第五指、右腰小材、左腰小材)
エ)後補漆層については衣部分は除去。肉身部については剥落止めを施す。
オ)玉眼に付着した金箔は除去する。
カ)虫穴、鼠害は埋める。

・光背
ア)接合がゆるんでいる部材は再接合する。
イ)亡失箇所は新造する。(光背先端部複数箇所、頭光部分、宝珠)
ウ)後補の補強材は撤去し、新しい補強材を取り付ける。
エ)鼠害の損傷箇所は新造する。(八葉部分に2箇所)
オ)漆箔の剥落は剥落止めの処置をする。

・台座
ア)部材を解体し、再接合する。
イ)欠失部分は新造する。(敷茄子の装飾部分。框の飾り部分、複数箇所。蓮肉の一部、蓮弁複数 箇所、背面の隅足、内部構造材)
ウ)割損部分は再接合する。(蓮弁、複数枚)
エ)鼠害の損傷箇所は埋める。(天板に2箇所)
オ)漆箔の剥落は剥落止めの処置をする。

※以上、古色仕上げとする。




2012年 非営利活動に係わる会計報告


■寄付総額     379000円
■使用金額     
雑費+消耗品     7060円
修理補助材料費   360000円
修理援助費     200000円

■前年度繰越金  1076031円
■次期繰越金    887971円 




 

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