特定非営利活動法人 古仏修復工房

古仏修復工房は文化財の修復を通して日本の文化を守り、後世に伝える活動をしています。


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1.2013年 集落管理 十一面観音像、如意輪観音像、地蔵菩薩像 

 震災の際に破損した像です。集落管理の小さいお堂の中に厨子入りの仏像が数体入っておりますが、揺れで台から落ち被害を受けました。その内、破損がひどい3体を対象に援助しております。 
 十一面観音像、如意輪観音像、地蔵菩薩像で、いずれも像高が30cm程です。破損の程度は、各像バラバラなのですが、十一面観音と地蔵菩薩は一木造りというシンプルな構造のため、目立つ破損はありません。それに対して、如意輪観音像は手足が外れ大きく破損しております。これは如意輪観音像が寄木造りであるという構造に起因するものですが、どの像も台座と光背はバラバラになっており修理が必要な状態でした。
 造られた年代は、如意輪観音については、厨子に江戸時代の銘があり製作年代が判明しています。他の2体は銘が無いため正確なことはいえませんが、江戸時代の修理銘があり、市の調査でも室町末から戦国期の造像ではないかと推測されております。共に集落の歴史を代表する貴重な御像です。
 今回の修理については、基本的になくなった部材は構造的に必要な部分以外は新たに造らず、破損前の状態に戻すことを主眼に修理をすすめました。






如意輪観音像、地蔵菩薩像、十一面観音像 修理作業報告書



如意輪観音像

修理完了写真



修理前写真



【事業概要】
1.名称  :木造 如意輪観音菩薩坐像
2.員数  :1躯
3.管理者 :−
4 所在地 :茨城県−


【法量】※修理完了後
像本体  像高  23.0cm/最大幅  19.5cm/最大奥  13.8cm/髪際高  16.5cm 
光背   光背高  32.2cm/最大幅 22.5cm/最大奥  6.3cm/ホゾ高  1.8cm
台座   台座高  20.0cm/最大幅   29.0cm/最大奥  23.2cm
全体    総高  52.4cm/最大幅  29.0cm/最大奥  23.2cm


【品質構造】
木造、一木造り。玉眼。漆箔像。髻の先端下部分から像底まで主要一材。面部を割矧ぎ、玉眼を嵌入する。髻の先端部は別材。右足も含めた膝前材を体幹部に接合する。裳先は別材。各脇手はそれぞれ別材。


【墨書】
・光背 裏面
・厨子 屋根内部


【修理基本方針】
 現状維持修理を基本とし、欠失部分は新たに造らない。


【損傷状況】
・如意輪観音菩薩坐像
ア)亡失箇所がある。(右前腕(上)、左手指先、持物、飾金具類)
イ)玉眼が外れている。
ウ)主要部材の接合が外れている。
エ)全体に剥落が生じている。

・光背
ア)亡失箇所がある。(周縁部の上部部材)
イ)主要部材の接合が外れている。
ウ)全体に剥落が生じている。


・台座
ア)亡失箇所がある。(岩座の一部)
イ)主要部材の接合が外れている。
ウ)全体に剥落が生じている。


【修理仕様】
・如意輪観音菩薩坐像
ア)亡失箇所は現状のままとした。(右前腕(上)、左手指先、持物、飾金具類)
イ)玉眼は嵌め直した。
ウ)外れている部材は再接合した。
エ)剥落箇所は剥落止めの処置をした。

・光背
ア)亡失箇所は現状のままとした。(周縁部の上部部材)
イ)外れている部材は再接合した。
ウ)剥落箇所は剥落止めの処置をした。

・台座
ア)亡失箇所は現状のままとした。(岩座の一部)
イ)外れている部材は再接合した。
ウ)剥落箇所は剥落止めの処置をした。

※以上、古色仕上げとした。



地蔵菩薩像

修理完了写真


修理前写真



【法量】※修理完了後
像本体 像高  25.1cm/最大幅  22.9cm/最大奥  20.1cm/髪際高  23.5cm/全高  29.0cm
光背   光背高  42.1cm/最大幅  27.7cm/最大奥  6.2cm
台座   台座高  19.0cm/最大幅  31.6cm/最大奥  25.0cm
全体   総高  61.1cm/最大幅  31.6cm/最大奥 25.0cm


【品質構造】
木造、一木造り。玉眼。肉身漆箔、衣は弁柄漆仕上げ。頭頂から像底まで体幹部は一材。面部を割り矧ぎ、玉眼を嵌入する。体幹部に両肩側面材を接合し、さらに左右に小側面材を接合する。左右袖口材と手先は別材。膝前材は一材。垂下する左足と衣はそれぞれ別材。


【墨書類】
・岩座背面
・框裏
・厨子背面


【修理基本方針】
 現状維持修理を基本とし、欠失部分は新たに造らない。


【損傷状況】
・地蔵菩薩半跏像
ア)亡失箇所がある。(白毫、左手、持物、左足)
イ)欠失箇所がある。(右指第四指、第五指、左袖口)
ウ)主要部材の接合が外れている。

・光背
ア)亡失。周縁部のみ現存するが、この像のものであるかは不明。

・台座
ア)亡失箇所がある。(岩石の一部、光背ホゾ足の接合部)
イ)主要部材の接合が外れている。
ウ)全体に剥落が激しい。


【修理仕様】
・地蔵菩薩半跏像
ア)亡失箇所は現状のままとした。(白毫、左手、持物、左足)
但し、白毫のみ新たに入れた。
イ)欠失箇所は現状のままとした。(右まぶた、右指第四指、第五指、左袖口)
  但し、右まぶたのみ形を造った。
ウ)外れている部材は再接合した。

・光背
※現存している周縁部を使用した。なお、周縁部の下部分は切り取られている。
ア)外れている部材を再接合した。
イ)亡失している身光部分は仮のものを製作した。
ウ)光背周縁部の下部分は切り落とされているが、現状のままとした。

・台座
ア)亡失箇所は現状のままとした。(岩石の一部、光背ホゾ足の接合部)
但し、光背ホゾ足の接合部のみ新たに造った。
イ)外れている部材は再接合した。
ウ)剥落箇所は剥落止めの処置をした。

※以上、古色仕上げとした。



十一面観音像

修理完了写真


修理前写真



【法量】※修理完了後
像本体 像高  28.6cm/最大幅  22.7cm/最大奥  18.4cm/髪際高  22.6cm
光背   光背高  29.3cm/最大幅  14.2cm/最大奥  0.9cm/ホゾ高  2.5cm
台座   台座高  14.0cm/最大幅   25.6cm/最大奥  21.9cm
全体   総高  43.3cm/最大幅  25.6cm/最大奥  21.9cm


【品質構造】
木造、一木造り。玉眼。肉身部は漆箔。衣は彩色か。頭頂より像底まで一材。面部を割り矧ぎ、玉眼を嵌入する。膝前材を体幹部に接合する。髻、化仏、両手口材、両手先は別材。


【修理基本方針】
 現状維持修理を基本とし、欠失部分は新たに造らない。


【損傷状況】
・十一面観音菩薩坐像
ア)亡失箇所がある。(化仏、右袖口、右手、持物)
イ)欠失箇所がある。(左指第二指、五指)
ウ)主要部材の接合が外れている。

・光背
ア)部分的に剥落が生じている。
※後補の可能性がある。

・台座
ア)亡失箇所がある。(岩石の一部、框)
イ)主要部材の接合が外れている。


【修理仕様】
・十一面観音菩薩坐像
ア)亡失箇所は現状のままとした。(化仏、右袖口、右手、持物)
イ)欠失箇所は現状のままとした。(左指第二指、五指)
ウ)外れている部材は再接合した。

・光背
ア)剥落止めの処置をした。

・台座
ア)亡失箇所は現状のままとした。(岩石の一部、框)
イ)外れている部材は再接合した。

※以上、古色仕上げとした。




2013年 非営利活動に係わる会計報告


■寄付総額     855500円
■使用金額     
雑費+消耗品    18842円
修理補助材料費、他 600000円

■繰越金         236658円 
■前年度繰越金+繰越金 1124629円
※繰越金は2014年度修理予定の子安観音像の修理にあてさせていただきます。





 

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