特定非営利活動法人 古仏修復工房

古仏修復工房は文化財の修復を通して日本の文化を守り、後世に伝える活動をしています。


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1.2014年 集落管理 伝子安観音立像 

今回、修理した像は集落管理の公民館に安置されている像です。お堂の老朽化に伴い、公民館に建て替え、仏像も公民館に安置されました。公民館に仏像というとおかしく聞こえるかもしれませんが、お寺が公共施設のような役割を持っていた時の痕跡を見ることができます。
 像の形から言うと鬼子母神なのですが、地元では子安観音として伝承され、また江戸時代の記録からも子安観音として記載されています。古くは、遠方からも参詣の方が訪れたとのことです。今は、地元の方々が中心となって管理されており、お彼岸の時期には地元の方々のみで祭礼がおこなわれるそうです。次の世代にも長く残っていって欲しいと思います。






観音堂 木造 伝子安観音立像 修理作業報告書



伝子安観音立像

修理完了写真



修理前写真



胎内仏 聖観音菩薩立像



【事業概要】
1.名称  :木造 伝子安観音立像
2.員数  :1躯
3.管理者 :-
4 所在地 :茨城県-


【法量】※修理完了後
伝子安観音立像
像本体 像高  76.1cm 最大幅 19.1cm 最大奥 15.2cm
像高(頭飾含む)  77.0cm 最大幅(頭飾含む)24.2cm 髪際高   67.1cm
ホゾ高 4.1cm
台座 台座高 28.3cm 最大幅   38.8cm 最大奥 26.6cm
光背 光背高     82.7cm 最大幅   25.2cm 最大奥 10.1cm
ホゾ高     4.1cm
全体 総高 110.9cm 最大幅 38.8cm 最大奥   26.6cm

胎内仏 聖観音菩薩立像
像本体 像高  28.9cm 最大幅 10.4cm 最大奥 5.3cm
髪際高 25.2cm    


【品質構造】
・伝子安観音立像
 木造。寄木造。玉眼。彩色像。髻より足底まで主要体幹部は前後二材を接合する。前面材は胸で、背面材は首で割り剥ぐ。面部は割剥ぎ、内刳りを施した上で玉眼を嵌入する。両肩側面材は前後で主要二材。袖口など小材を接合する。髻先端、童子、背面材の一部、両手先、裳裾、両足先はそれぞれ別材。

・胎内仏 聖観音菩薩立像
 木造。一木造。彫眼。漆箔像。内刳りなし。頭頂より像底まで体幹部は一材。両肩側面材を体幹部材に接合する。両手先、両足先、髻先端、持物は別材。現状は頭部前面部(化仏部分か)は欠失。髻先端部、両足先は亡失。胎内に納入するため、両袖口、背面を削り取っている。


【墨書】
・台座 框

観明代
奉再興
下総國□□郡
    猫実村
  江戸桜井春房門人
天保二卯年 佛師
    五月日 □□


・堂内扁額(参考)

當寺地蔵菩薩者慈覚大師之御作なり
則延命地蔵与奉申別而懐胎の女人を守り
給ふゆへに俗又子安之地蔵尊とも号し奉る
往昔より霊験其数を知らす経に五の
福を説給所豈可疑哉

同観音大士往古中野の原に安置し給ふゆへ 
堂窪中埜乃観音と申奉る御長ヶ纔に七寸  
則當尊之御腹篭なり殊に女人の安産を
守り給ふゆへに是亦子安の観音とも
号し給へり
経曰若有女人設欲求男禮拝供養観世
音菩薩便生福徳智恵此男設欲求女
便生端正有相之女云云

両尊の霊験あらたなると申むかしより
翰墨に尽し難し偏に念するともからは現当
二世の諸願圓満たるへきものなり

   享保十五戌歳十月


【特記】
子安観音として伝来している像。しかし、持物は持たないものの唐代の貴婦人風の服を身につけているところから、天部、訶梨帝母(鬼子母神)ではないかと思われる。堂内の扁額からは享保十五年(1730年)時点ですでに子安観音として伝承されていたことがうかがえる。
胎内の像については、伝子安観音像に納入するため背面を削り取っていることから、伝子安観音の像立当初から入れられたものではなく、途中、修理の際に納入されたものか。また、修理銘のある框部材であるが、複数の台座部材が複雑に混ざった状態から部材を選別したため、確実に伝子安観音像の台座部材であるかは判然としない。ただ、修理の痕跡から同時期に修理された可能性は高い。


【修理基本方針】
 現状維持修理を基本とし、欠失部分は新たに造らない。


【損傷状況】
・本体
ア)各部材の接合が外れ、半壊状態。
イ) 亡失箇所がある。(髻先端部、右裳先、飾り金具類)
ウ)欠失箇所がある。(胸の一部)
エ)玉眼の押さえが外れている。
オ)彩色の剥落がある。

・光背
ア)各部材の接合がゆるみ、一部外れている。
イ)欠失箇所がある。(光背先端、八葉の複数箇所)
ウ)割損箇所がある。(光輪の複数箇所)
エ)漆層の剥落がはげしい。

・台座
ア)複数の台座部材が混在している。
イ)各部材の接合が外れ全壊状態。
ウ)亡失箇所がある。(複数部材)
エ)光背が直立しない。
オ)一部虫穴が開いている。
カ)漆層の剥落がはげしい。


【修理仕様】
・本体
ア)ゆるんだり外れている部材は再接合した。
イ)亡失箇所は新造した。(髻先端部、右裳先、飾り金具類※頭飾のみ新造した)
ウ)欠失箇所は新造した。(胸の一部)
エ)玉眼は描き直した。押さえは留め直した。
オ)彩色の剥落箇所は剥落止めの処置をした。

・光背
ア)ゆるんだり外れている部材は再接合した。
イ)欠失箇所は新造した。(光背先端、八葉の複数箇所)
ウ)割損箇所は再接合した。(光輪の複数箇所)
エ)漆層の剥落箇所は剥落止めの処置をした。

・台座
ア)伝子安観音像のものと思われる台座部材を選別した。
イ)ゆるんだり外れている部材は再接合した。
ウ)亡失箇所は新造した。(複数部材)
エ)光背が直立するようにホゾ穴を調整した。
オ)虫穴は埋めた。
カ)漆層の剥落箇所は剥落止めの処置をした。

※以上、古色仕上げとした。









 

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