仏像修復と日本文化を守る

仏像などを修理・修復する事によって日本の文化を守り、後世に伝えるのを目的としたサイトです。

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損傷状況の種類について

仏像や木製文化財には様々な種類の損傷があります。
その、損傷の原因を見極め、取り除く事が文化財を次の代へと伝えていく第一歩となります。
それらを緊急の度合いが高い順番に並べます。
修理を頼む際のご参考にしてください。


1.自然劣化 


干割れや漆の劣化、彩色の変色、膠の接着力が落ちる…。
これらは木材、絵の具や膠が光や熱によって自然劣化していく為です。
日本では風化した雰囲気が好まれる傾向にあるため、これら、経年変化が起こっても、壊れとは認識されないこともあります。

しかし、膠の接着力が落ちれば、寄木造りの像でしたら、各部材が遊離しバラバラになります。
そして、多くの場合、そのまま、部材が散逸したりなくなったりします。
特に何もしなくてとも、仏像が壊れていくのはこのためです。
同時に彩色もほぼ、日本画と同じく、絵の具の固着を膠で行う為、膠が劣化すれば、剥落をなどの損傷が生じます。
漆は酸、アルカリ、その他薬品に強いとよく言われますが、紫外線に対して脆弱な為、やはり、剥落していきます。
■接着剤の劣化
[緊急度5]
膠は数十年で劣化し、接着力が弱まります。
釘などを使わずに、漆のみで、接着された像の場合、ある時期にくると 一気に崩壊が進みます。

対策
緊急です。すぐに修復家に修理を依頼してください。
移動や地震、何らかのきっかけで、すぐに壊れます。
また、その際に部材亡失のおそれがあります。
特に大きな部材が亡失した場合、修理費用もその分、高価になります。
早めの修理がオススメです。
■彩色の剥離、剥落 
[緊急度4〜5]  
彩色の膠分が劣化して剥がれてしまう事です。

対策
緊急です。すぐに修復家に修理を依頼してください。
どの程度まで剥離しているかが問題ですが、大きく彩色が離れてたり、浮いているような場合、 かなり危険です。
何らかのきっかけで、彩色が剥がれたり、大きく損なわれたりします。
一度、完全に剥離した彩色は、完全には戻りません。
彫刻的・美術的価値を大きく下げる可能性があります。
あなたの持っている文化財を次の世代に、より良い状態で伝えるため、修理をお願いします。
■漆塗膜の剥離、剥落 
[緊急度4〜5]
漆分が紫外線などのため劣化し、剥がれる事。

対策
緊急です。すぐに修復家に修理を依頼してください。
どの程度まで漆が剥離しているかが問題ですが、大きく漆が離れてたり、浮いているような場合、 かなり危険です。
何らかのきっかけで、漆層が剥がれたり、大きく損なわれたりします。
一度、完全に剥離した漆は、戻しても、見苦しくなります。
彫刻的・美術的価値を大きく下げる可能性があります。
あなたの持っている文化財を次の世代に、より良い状態で伝えるため、修理をお願いします。
■欠失 
[緊急度4]
壊れたり、接着剤が離れたりして、落ちた部材が紛失してしまう事です。

対策
緊急です。一度、紛失した部材は、まず出てくる事がありません。
落ちた部材は必ず、わかる場所に保管して、修理を依頼するときに渡してください。
■矧ぎ目遊離
[緊急度3]
接着剤・釘が、劣化腐食して、ちゃんと接着されていない状態です。

対策
問題ですが緊急ではありません。
像を動かすときは、慎重に動かしてください。
何かのきっかけで、すぐに外れる可能性があります。
■鉄釘、鉄鎹等の腐食
[緊急度3]
鉄が錆びることによって、釘が膨張して木を割ったり、周辺の木質を炭化させたります。

対策
問題ですが緊急ではありません。
ただし、早めに問題の鉄釘、鉄鎹等を外す必要があります。
■割損
[緊急度3]
材が割れて、離れてしまう事です。

対策
問題ですが緊急ではありません。
落ちた部材は必ず、わかる場所に保管して、修理を依頼するときに渡してください。
■脱落
[緊急度3]
接着剤・釘が、劣化腐食して、部材が取れてしまう事です。

対策
問題ですが緊急ではありません。
落ちた部材は必ず、わかる場所に保管して、修理を依頼するときに渡してください。
■干割れ
[緊急度1]
木材が乾燥する事によって生じる割れの事です。これを防ぐために内刳りなどの技術が発達しました。

対策
特に問題はありません。
普通、大なり、小なりの干割れが仏像にはあります。
気になるような大きなものでなければ問題ないと思ってください。


2.環境被害 


最近では酸性雨などもあげられますが、主に生物被害です。
虫による虫害。
鼠による食害、糞害。
カビによる腐朽、などがあげられます。
構造体である木材そのものに影響を及ぼす為、彩色層などにも当然影響が出ます。
特にひどい腐朽になると、彫刻表面が腐ってなくなる上に材そのものもスポンジのようになり、構造を維持できなくなります。
また、像自体、ほとんど動かされることがない為、鼠などの巣になりやすいようです。
像に穴を開けたり彫刻をかじりまくります。
■木材の腐朽
[緊急度4〜5]
褐色腐朽菌、白色腐朽菌よって木材が腐朽すること。
ひどいものはスポンジ状になり、触ると指のあとがつくほどになります。
湿度が高すぎるのが原因です。

対策
緊急です。すぐに、風通しを良くして、修復家に修理を依頼してください。
状態に寄りますが、触ってみて、へこんだり、柔らかいようでしたら、その仏像は完全に腐っています。
早急に、樹脂による材質強化を施す必要があります。
柔らかいと行かないまでも、完全に色が変色していたら危ない状態です。
少しづつ、彫刻がくずれ、ただの木の塊のようになっていきます。
彫刻的・美術的価値をより、大きく下げる可能性があります。
あなたの持っている文化財を次の世代に、より良い状態で伝えるため、修理をお願いします。
■虫食い
[緊急度4]
シバンムシ、ヒラタキクイムシなど文化財害虫によって木質が喰われ、木が弱くなる事。
周囲に大量の虫の糞がででたり、移動の時に壊れやすくなります。

対策
緊急です。すぐに修復家に修理を依頼してください。
彫刻的・美術的価値を大きく下げる可能性があります。
状態に寄りますが、虫食いがひどい場合、仏像が形を維持できなくなります。
彫刻表面が虫によって食い荒らされ、移動の際にも非常に壊れやすくなります。
■ねずみの害
[緊急度3]
ねずみにかじられる事で彫刻が欠失することです。

対策
問題ですが緊急ではありません。 ※仏像の顔など(特に目の周りを囓られる事が多い。)目立つところをかじられた場合は別です。
お供え物などは片付けてください。
仏像自体がネズミの巣になっている可能性があります。
■ほこり
[緊急度2]
長年でたまった、ほこり固化し、像表面を汚していること。

対策
多生、問題ですが緊急ではありません。
ただし、ホコリはカビの生える土壌になりますので、たまに掃除をしてください。
その際に、彩色について注意してください。
■すす
[緊急度2]
すすが固化し、像表面を汚していること。

対策
多生、問題ですが緊急ではありません。
すすの場合、彩色に強く固着している事が多く、なかなかキレイになりません。
強くふき取ると、彩色まで痛めますので、軽く掃除する程度にしてください。


3.人災 


人災は他の環境被害や自然劣化に比べて、結果がひどくなる傾向があります。 まず、盗難。
盗まれたものは、ほとんどの場合、持ち主に戻ることはありません。
ひどい話では、普通の観光客が盗難することもあるようです。
海外などに流出した場合は、なおさらです。
火災、放火、失火。
火事などで像が燃えた場合、修理は不可能に近いのが現状です。
やるとしても、その燃えた炭の形を、形状保存する程度です。
寂光院の地蔵菩薩や東寺の四天王等の例があります。
(炭の上に樹脂などで、モデリングして復元する方法もありますが、それは文化財の保存ではなく、復元になります。)
過失、いたずら。
掃除中に指を折ってしまったという軽いものから、何かをぶつけて壊してしまった…等々。
運搬中に、落として、大破したなどという話も聞いたことがあります。
また、仁王像など屋外に安置してあるものの場合、落書きなどされることがあります。
さらに、仁王像の玉眼を空気銃で狙うという罰当たりな子供もいるようです。
子供の頃…思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
■火災
[緊急度※]
■盗難
[緊急度※]
■不注意
[緊急度3]
掃除中や運搬中の不注意など

対策
できるだけ、注意して作業してください。
■亡失
[緊急度3]
持物等が紛失すること。

対策
一度、紛失した部材は、まず出てくる事がありません。
落ちた部材は必ず、わかる場所に保管して、修理を依頼するときに渡してください。
■打損失
[緊急度3]
衝撃によって出来る打ち傷。

対策
できるだけ、注意してください。
■磨損
[緊急度2]
彫刻が摩滅して損なわれること。触りすぎ、掃除のしすぎなど。

対策
信仰に関係する特別な像の場合は別ですが、掃除が原因の場合はほどほどにお願いします。


4.修理損


後世に本来の造像当初の形から、別の状態に改変することがあります。
例えば、玉眼の改造です。
また、寺の宗派が変わったときなどは、それまで、阿弥陀であったものを釈迦にしたり、それを逆にしたり、(手を継げ変えます)ということが、よく行われています。
実用品としての修理ですから、当時としては普通のことでしたが、現在では文化財的修理の考ええ方が入ってきたため、”当初状態からの形の変更”は修理損と判断されます。
(お寺にとっては損傷ではないといえますが、美術史家にとっては損傷と判断します。)

また、実用品としての修理であっても修理技術が悪かったり、あからさまに違和感がある修理もあります。
こうなってくると、単に当時としても可だったといえないものもあります。
例えば、ペンキで塗りたくったり…。
全身を膠で紙張りした結果、彫刻表面が虫で食われ放題になったり…。
頭部を彫り直したり…。
台座の順番がばらばらであったり…。
現代でも、残念なことですが、修理を頼んだ結果、前より悪くなったという話が結構あるようです 。
■後世の修復
[緊急度3〜5] 適切でない修理をさします。
古い部分を好みで削り直したり、形状の合わない部材を無理につけられてたり、ペンキを塗ったり、像本来の形を損なっているものです。

対策
緊急です。すぐに修復家に修理を依頼してください。
状態に寄りますが、著しく、本来の像の形状を損なっている可能性があります。
あなたの仏像は本来、もっと、彫刻的にも美術的にも素晴らしいものであった可能性があります。
適切な修理で無かった可能性がある場合、信頼できる修復家に修理を依頼してください。
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